小川敦生さんの問題作

只今展示中の小川敦生さんの作品。告知などでご覧になれる大きな作品とは別に、問題作が2点あります。一見真っ白に見えるこの作品、近づいて凝視するととんでもないことに気づきます。この恐ろしいまでの精密さに一瞬意識が飛んで、その後は、鑑賞する方それぞれの経験に基づく脳内処理が望む望まない関係なしに始まります。どこかに落とし込まないではこの場を離れられない、そんな作品です。

僕は小川さんの音楽マニアな一面を知っているからか、僕自身のアート好きな部分に依るのか分かりませんが、デュシャンのロトレリーフ、クリスチャンマークレイなど、音楽的側面の強いアーティストや作品との関連付けを勝手にし、そしてこの作品の持つ全体に携える一見すると「静」の面と、凝視した後に気づく「生」や「動」の部分を、非常に音楽的だと感じました。これは、鑑賞者が内面と対峙せざるをえない問題作です。しかしながら、純粋なビジュアルアートとしての存在感をも獲得しており、来場された方の多くがこの小ぶりな作品の持つ磁場に足を取られ、唸りながらお店を後にしていました。